健康寿命を伸ばすには「自分の足で歩くこと」が重要
2023/11/25
前回、犬の体の特徴や、姿勢の悪さが引き起こすいろいろな症状についてお伝えしました。
体の特徴に合わせ、適切なケアをしてあげることが、愛犬が犬生の中で、自力で歩ける時間をより長くし、健康寿命が伸びることにつながっていきます。
「おいしくごはんを食べられること」も愛犬にとってすごく大切な「生きる」要素ですが、「自力で歩くこと」、「排泄ができること」も愛犬にとって、そして飼い主さんにとって生活の質を上げるために重要なポイントです。
足腰を鍛える方法としては、例えば最近は愛犬用のプール教室、筋トレ教室なども増えているので、これらを利用する方法もありますが、やはり通い続ける時間と労力、費用を捻出するのは大変だと思います。
今回の記事では後半部分に、おうちでできるトレーニングについても書きますので、お読みください。
シニアの関節トラブル、まだ諦めないで!!!関節軟骨は今からでもケアできる!
歳を重ねると、筋力の衰えだけでなく、関節のトラブルも起きてきます。
関節軟骨の退行性変化、いわゆる、すり減るというのは、痛みもでますし、足の動きも制限されるので、愛犬はもちろん、見ている飼い主さんも辛いものがあります。
しかし、この関節のトラブル、高齢ラットを使った実験である運動をさせたところ、関節軟骨に厚みがでるなど、改善がみられたという報告があるのです!
実験方法は、バランス運動を取り入れたグループと、何もしなかったグループ、ランニングをさせたグループの3つの測定を行っています。
関節軟骨に厚みが出てきたのは、バランス運動を取り入れたグループでした。
ラットを乗せた台を斜めにして、姿勢を保つように踏ん張らせたのです。
また、ランニングをさせたグループは、高齢ラットの場合、負担が大きく、過剰なメカニカルストレスになり、軟骨の維持や修復ができないばかりか、悪化させることが分かっているそうです。
シニアでもまだ動ける子、これからシニア期を迎える子は、将来の関節トラブル防止のため、この踏ん張る運動が効果的だと考えています。
すでに痛みのある子は無理をせず、痛み止めをうまく活用しながら、本人の辛さをとることを優先してあげるといいと思います。
家やお散歩でできる、愛犬の筋トレ方法
このように、筋力を落とさないようにするための筋トレや、関節軟骨の維持に有効な運動は、実は特殊なことをしなくても、生活の中でやっていくことができます。
たとえば、毎日のお散歩を一工夫することでも可能です。
お散歩コースでアスファルトばかりを歩いているのは、もったいないです!
少し柔らかいところを歩くだけでも筋トレになります。
芝生、土の上、砂浜など、柔らかい場所を歩くと、足腰に負荷がかかり、筋トレになり、愛犬が足の指をしっかり開いて大地をつかむので、足がしっかり使えるようになります。足の指を開くことができれば、滑りやすいフローリングの床も、滑らず上手に歩けることにつながります。(床が滑りやすい、という事実は変わりませんが。)
お散歩コースの中に土手や、傾斜のある芝生などがあれば、踏ん張る運動もできます。
坂道を登って、一旦止まるのも踏ん張る運動になりますし、傾斜の付いた場所を上るのではなく横切るように歩くのもおススメです。
お散歩に行けないときは、ベッドや座布団などの柔らかいものの上を歩くと、これもまた足腰に負荷がかかり、筋トレになります。
ぴょんぴょんとジャンプするのではなく、右、左と足を交互に踏み出して、一歩ずつ歩くのが大事なので、おやつなどで歩く方向やスピードをコントロールしながらやってみてください。
土手や傾斜が近所にない場合は、下の写真のように、ご自宅で滑り止めを貼ったスノコなどを利用して筋トレができます。
写真のスノコはイメージなので、幅が狭いです。
実際は愛犬が踏み外したり、落ちないように、もう少し余裕のある幅のものでやってみてください。
こちらもおやつを上手くつかって、踏みとどまれるようにコントロールしてみてください。
このようなトレーニングは微力かもしれませんが、いつもの生活の中でできるということ、無理なく遊びながらでもできること、これが続けるコツだと思います。
老いは必ず、どの子にもやってきますが、そうなってから後悔しないように、できることを楽しみながらやってみてください。
北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業後16年間、動物病院、保健所に勤務。
東洋医学・マッサージ・メディカルアロマを使って、飼い主さん自身が「愛するペットの健康を自分の手で守る」ホームケア講座を主催。1,000頭以上の飼い主さんへ自然療法のアドバイスを実施。