まもなく18歳になる愛犬、まずは出会いのお話から
2023/08/24
うちの愛犬は柴犬の女の子で、「ななみ」といいます。年齢は17歳、10月には18歳を迎えます。少し前から、外での歩行が困難になるなど、日を追う毎に体力が低下しています。
ななみがまだ若かった頃、近所に、ヨタヨタと歩く老犬がいました。その横を跳ねるように追い越していったものですが、当時は、我が愛犬が衰えることなど想像もできませんでした。
まず、ななみがうちの家族になった経過からお話しします。
徳島県からやってきた保護犬
年齢は17歳と紹介しましたが、正確に言えば推定年齢です。というのも、ななみは町中をさまよっていたところを保護された保護犬だからです。徳島県の保護施設からやってきたとき「獣医の見立てでは6歳くらいとのことでした」との説明がありましたので、うちに来た日を6歳の「誕生日」としました。奇しくも、その日は長女の誕生日でしたので、この日を忘れることはありません。
「ななみ」という名前は、保護施設が付けたものです。引き取ってから名前を変える里親も多いと聞いていたので、私共も漠然と候補を考えていましたが、保護施設に遊びに来ていたお子さんが自分と同じ名前をつけたのだと聞いて、何かの縁と思いそのまま名前を継承することにしました。
うちに来たときは、触るとあばら骨がわかるくらいに痩せていました。そのとき6.0㎏と聞きましたが、今思うと、もう少し軽かったような気もします。
おでこにイチョウの葉のような白い模様があるのも特徴的でした。ところが数カ月が経過した頃、ふと気づくと頭部がすべて茶色になっていたのには驚きました。想像するに、人間と同じようにストレスで一時的に白髪になったのではないでしょうか。
極端に異なる柴犬の性格
柴犬は以前にも飼ったことがあり、特性については熟知しているつもりでいました。「散歩が好きで、出発のたびに喜びを全身で示す」「運動が好き」「ドライブが好き」「知らない人が訪ねてきたら吠える」といったところが、前に飼っていた柴犬の特徴でしたが、これが見事なくらいに真逆の性格でした。散歩に行くときもまるで無反応だし、少し距離を伸ばすと全力で歩行を拒否します。
さすがにドッグランでは、はしゃいで全力疾走をするだろうと思い、期待をして連れて行ったのですが、紐を放しても周囲の匂いを嗅いでいるだけ。まったく走るそぶりは見せませんでした。ドライブに連れて行っても、無用なあくびをしてストレスを隠そうとしません。また、他人に吠えることは、まったくありません。同じ柴犬で、これほどの性格の格差があることは、大きな驚きでした。
最も困ったのが、抱っこを拒否することでした。保護犬だからなのか、なかなか新しい飼主を信頼してくれない感じでした。ただ、美容院の方が迎えにくると、黙って抱っこされて車のケージに入っていましたから、私の不慣れさも大きな要因だったかもしれません。
老化がもたらす困難は必ず克服できる
当初は、ほとんど吠えることなく、近所の人が触っても特に反抗もしなかったので、これまで飼った愛犬の中では、最も扱いやすいタイプだと思っていました。しかし、老化とともに室内を徘徊するようになると、入隅などで方向転換ができなくなり、パニックに陥ったように吠えるようになりました。何度も吠えるわけではなく、瞬間驚くくらいのことですから、一般的には問題になることではありません。
ところが、問題は人間側にありました。妻が数年前から、突然の騒音に硬直して転倒をするようになってきたのです。この症状が現れ始めた当初は、妻自身もまるで無防備だったため、「ワン」と吠えると同時に妻が転倒するという、劇場でコントを演じているかのような状態になってしまったのです。
妻は実際何度か怪我をして、笑い話では済まない事態も何度かあったのですが、ある程度警戒をしながら、室内で過ごすなどの対策を講じることで、大過なく過ごせるようになっています。
愛犬ななみは、老化の進行とともに、歩行が困難になる、自分で食事ができなくなる、室内で粗相をするといったハプニングが試練のように次々と訪れるようになりました。しかし、そうした経験を通じてわかったことは、試行錯誤しながらも対策を講じることで、いつの間にか試練が試練でなく、楽しみに変わっていくということです。
歩行が困難になったり、室内で粗相をしたりといったことに、実際にどのような対策を講じたのかということは、今後の章でお話をしていきますが、ひとついえることは、老化の対策をしていくことで、確実に愛犬との距離が縮まるということです。たとえば寝室にしても、10年以上の間、愛犬は1階のリビングで寝て、夫婦は2階の寝室で寝ていましたが、いろいろとトラブルを解決していくうちに。今では4畳半の狭い和室で、川の字になって一緒に寝るようになりました。
まさか夫婦と愛犬が枕を並べて寝る日が来ようとは、当初は夢にも思いませんでした。
作家、フリーライター、文芸同人誌『あるかいど』発行人
短編小説集『けったいな犬やっかいな猫』(ことの葉ブックス)で、保護犬と暮らす青年の生き様を描く。
現在、シニア犬の柴犬、ななみと暮らす。