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我が家の愛犬は元繁殖犬

我が家の愛犬は元繁殖犬
獣医師・岩田まりこ

2023/09/11

愛犬クリームとの出会い

わたしの愛犬クリームは元繁殖犬です。

何頭出産したかはわからないのですが、6歳まで人のために子犬を産んで働いた、頑張り屋さんです。

40頭の多頭飼育の中、歯は歯石だらけで酷い歯肉炎、どこで食べたか胃の中には小石が入っており、さらに鼠径ヘルニアもあり、運動不足で後肢の筋肉は全然なく、お腹の筋肉もぺらぺらに薄い子でした。

見た目からも、お世話が行き届いているとは思えない状態でした。

繁殖犬を引退し、第二の人生(犬生)を歩むため、保護活動をされている方に引き取られていたところ、わたしと出会いました。

保護してくださった方のお家に会いに行ったとき、「ワンワン」と吠えまくりながらも、どこか愛嬌があり、わたしを見て「ホントは人が好きだよ!!」と言っているようでした。

最後の最後には、びくびくしながらも近寄ってきてくれ、「この子に心から寛げる居場所とおいしいご飯を作ってあげたい!」「愛情をいっぱい注ぎたい!」と思ったのです。

繁殖犬に愛と尊敬の気持ちを

我が家の愛犬クリームは、狂犬病予防接種をしていませんでした(ということは登録もされていない状態)。。。そして更に私が感じた切なさは、「子犬を生む」というブリーダーさんにとって一番大切な事をクリームは命を削ってやっているのに、「大切にされていない」ということでした。

わたしは、ブリーダーさんはとても大切なお仕事だと思っています。

子犬を産ませて、お金を得ることも悪くないと思います。

しかし、子犬を産んでくれる母犬に対して、敬意をもって、命に感謝してもらいたいのです。

命がけで出産する母犬に、尊敬と愛を与えて欲しいのです。

「可愛い子犬を産んでくれてありがとう!」という感謝や尊敬の気持ちがあれば、
犬を登録するという最低限決められた決まり事を怠ることはないと思うのです。

それは父犬も同様。母犬より扱いが酷いのではないでしょうか?

犬も猫も、他の動物に対しても同じようにわたしは思っています。

わたしはクリームをとても尊敬しています。

クリームが産んできた子犬たちが、新しく子犬を迎えたその家族を幸せにしているからです。
人を幸せにするなんて「本当にすごい子だよ!」と、わたしはクリームを心から敬っています。

行政も、もっと踏み込んでもらい、犬たちのために効果があるのかないのか?
そんなよくわからないようなチェック項目を義務的に見るのではなく、
「繁殖に使う動物の心身の健康面をもっともっと厳しくチェックする体制を整えて欲しい」と思っています。

わたしが小学生くらいまでは、外で飼っているいわゆる雑種犬という中型犬が多く、
近所のどこかで子犬が産まれると、譲り受けることも頻繁にありました。
ですから犬をペットショップで買ってくるという考えはあまりありませんでした。

かといって、近所をうろつく野犬は見かけませんでしたが、
わたしが小さな頃(平成一桁のころ)、年間約70万頭の犬猫が殺処分されていて、
現在は3万頭近くまで減りましたが(そのほとんどが猫です)、
改善されてきたとはいえ、その数にはやっぱり胸が痛みます。

もともと、人間が飼うことを前提にして存在している犬や猫が、
その人間から邪魔者扱いされること自体、とても理不尽な話。
そして、そこにあらがうこともなく、静かに亡くなっていく(現在進行形ですね)、、、
彼らのことを、忘れたくないし、人間はそこから感じて、学ばないといけないと思います。

頼ったり、甘えたりしなかった繁殖犬時代

わたしは両親も犬が好きで、子供のころからずっと家には犬がおり、診察で毎日たくさんのワンコを診て(見て)いるのですが、実は成犬の保護犬を飼うのは初めての経験でした。

そして、子犬から飼う場合とは違う・・・と、しみじみ思いました。

クリームの性格は、「人を頼るということ」、「人に甘えるということ」があまりできません。

わたしが診察で見る子たちは、怖いときは飼い主さんに抱っこをせがんだり、助けを求める子が多いのですが、クリームは、ただ恐怖におびえて震えているだけなのです。

わたしが、落ち着かせてあげようと、話しかけても撫でても、わたしでは用が足りないというか、わたしどころではないというか・・・そんな状態です。

保護犬を飼っている飼い主さんとお話をすると、やはりこのような状態になることが多いそうです。

これは想像になりますが、出産をたくさんする中で、痛いこともたくさんあったと思います。クリームの避妊手術をする際、帝王切開の跡もあり、内臓が癒着していたので、痛みもあったのかもしれません。

おそらく出産で、病院通いも、入院もしていたと思います。

そういう痛みや怖いことがあった時、自分を安心させてくれたり、愛してくれる存在が今までいなかったため、「頼る」とか「甘える」という考えがないのだと思います。

それでも人に怒るでもなく、騒ぐでもなくただ震えているだけなのは、病院やブリーダーさんの家で処置をされることが多く、怒って反抗すると逆に怒られてしまい、我慢していればいつかは無事終わる、という経験からきているのではないか?と思います。

我が家へ来て、クリームもたまに甘えたいときもあるようなのですが、なんだかやっぱり距離があります。(一人でへそ天して、ゴキゲンでいることもありますよ。)

これからの犬生は、わたしにお任せ!

クリームと出会って、犬は本当に、人間との関係が全てだということを思い知らされました。

もしかしたら、わたしの思い込みや、クリームにから見たら、わたしのお節介もあるかもしれません。
しかし、わたしのできることを行い、これから、もっともっとクリームと仲良しになりたいなと思っています。

ちなみに、クリームの体を東洋医学的に診てみました。すると、たくさん子犬を産まなければいけない環境で生きてきたので、生命のエネルギー「腎精」を酷使していました。そのため、一般的なペットとして暮らす犬より、老化が早いです。

歯がなかったり、足腰が弱かったり。。。

そんなクリームのために、私が行なっている自然療法を使ったホームケアの出番です!

クリームのために、わたしがいるんです。

「これからの犬生はわたしに任せてね!」




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獣医師・岩田まりこ (いわた まりこ)

北里大学獣医畜産学部獣医学科卒業後16年間、動物病院、保健所に勤務。
東洋医学・マッサージ・メディカルアロマを使って、飼い主さん自身が「愛するペットの健康を自分の手で守る」ホームケア講座を主催。1,000頭以上の飼い主さんへ自然療法のアドバイスを実施。

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